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静岡家庭裁判所 昭和50年(少ハ)3号 決定

少年 K・I(昭三一・一一・一生)

主文

本人を中等少年院へ戻して収容する。

理由

本人は、窃盗及び遺失物横領保護事件により昭和四八年一〇月一二日当裁判所に於て医療少年院送致の決定を受け、東京医療少年院に収容され、昭和五〇年五月一三日東京医療少年院を仮退院して東京都中野区○○町×-×-×○○園に帰住し東京保護観察所の保護観察下にあるものである。

少年は仮退院直後に○代○成○式○社に就職し、約一か月で機械を任せられたが、本人の製品が不良品として返品されてきたため社長に注意されたことや、通勤途上でみそめた女学生に交際を拒否されたこと等から自信を喪失し、七月二日職場から昼食のパンを買いにいくと称して島田市に赴き同日午後九時頃島田市○○町××の×○○中学校職員室から同校教論○本○郎所有に係るカシオポケットミニ計算機一台(時価六、〇〇〇円相当)ソニーカセットテープレコーダー一台(時価二万五、〇〇〇円相当)及び○司○子外二名所有にかかる現金合計一万五、三八〇円相当を窃取し、同夜は自宅近くの橋の下で明かし七月三日午後三時半頃帰園した。

帰園後中華料理店への転職を希望し七月九日より東京都杉並区所在の中華料理店「○○」へ就職し稼動していたが、八月八日同室の○坂○紀のズボンが紛失し、同僚から窃盗の嫌疑をかけられ寮生活に嫌気がさし八月一三日○和○を無断でとびだし仕事にも行かず、八月一九日頃まで新宿、浅草、上野等を徘徊し夜は公園のベンチへ寝るなどの放浪生活を送り八月二〇日急に富士登山を思いたち御殿場へ赴き同市内で一泊した翌朝折からの雨で人家の軒先にあつた女物の傘一本を窃盗し富士登山をあきらめて浜松市へ向い市内の公衆便所にあつた時計を警察署へ届けるため所持していたところ浜松駅前で東京医療少年院在院中の院生であつた○口○介と出会い誘われるままに藤枝市内の同人宅へ行き、そこで○口の父に静岡保護観察所へ出頭するよう説得され静岡保護観察所へ出頭したものである。

以上の事実は、本人が仮退院の際誓約した犯罪者予防更生法第三四条第二項第一号第二号及び同法第三一条第三項による関東更生保護委員会の特別遵守事項第五項にそれぞれ違反するものである。

少年は仮退院後適切な補導者の助言を受け当初は積極性を示したものの持続せず些細なことから自信を喪失し仲間と協調できないまま不平不満が内向し、果ては無断外出という形で逃避し安易に盗取行為にでるなど行動形式は今だに改善されておらず最早社会内での保護指導では改善は困難であるばかりか益々非行化する虞れが顕著であり、本人を少年院に戻して矯正教育を施す必要がある。

東京医療少年院退院後間もない本人に対しては新しい気分で耐性を養成する必要性を考慮するならば医療少年院より中等少年院へ送致するのが相当である。

よつて本申請は理由があるものと認め犯罪者予防更生法第四三条第一項、少年法第二四条第一項第三号、少年審判規則第五五条、第三七条第一項、少年院法第二条第三項により主文のとおり決定する。

(裁判官 兼築義春)

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